【アルテデザインガーデンの植物図鑑】トサミズキ

エクスエリア・ガーデンやランドスケープデザインに欠かせないものと言えば、植物ですよね。世界中には20万から30万種(学者により種の分類方法が変わりますのでおおよその数とお考え下さいね)の植物があると言われています。そこから日本の気候に合うものや地域の環境に合うもの、植えたい場所の特性にマッチした植物を選び出すとずいぶん数が減る訳ですが、それでもまだまだたくさんの種類があり、自分のお庭に合うものを探すのはなかなか大変ですよね。そんな困りごとの手助けになればと、このブログでは外構やお庭に植えるのにおすすめの植物を【アルテデザインガーデンの植物図鑑】として掲載していきます。
みなさんは「トサミズキ」という植物を知っていますか?四国地方にお住いのかたならピンとくるであろうトサミズキは、漢字で書くと「土佐水木」。そう、高知県の山地の石灰岩地域(蛇紋岩地帯)に多く自生している植物なんです!
まだ寒さの残る春先に、葉っぱよりも先に鮮やかなレモンイエローの小花を咲かせるトサミズキは可愛らしさもありながら野趣あふれる樹形の雰囲気も魅力のひとつ。ナチュラルガーデンや雑木の庭などで、高木と高木の合間をふんわりと優しく埋めてくれる庭づくりにはかかせない樹木です。このブログでは「トサミズキ」の特徴や育て方を詳しくご紹介!ぜひ参考にしてみてくださいね!
【もくじ】
【① トサミズキの基本情報】
【② トサミズキの特徴】
【③ トサミズキに種類はあるの?ヒュウガミズキは違う?】
【④ トサミズキの育て方】
【⑤ まとめ】
【① トサミズキの基本情報】
〇科属名 マンサク科トサミズキ属
〇園芸分類 落葉低木
〇花期 3月下旬~4月
〇耐寒性 普通(東北や北海道では寒さで枯れる場合があり、鉢植えが無難)
〇耐暑性 普通
【② トサミズキの特徴】

〇〇ミズキと聞いてまず初めに思い浮かぶのは…トサミズキ!ではなく、ハナミズキではないでしょうか?「ミズキ」と付いているので同じ種類だと思っている方も多いと思いますが、実は全く違う種類なんです。ハナミズキはミズキ科ヤマボウシ属でトサミズキはマンサク科トサミズキ属。ぜんぜん違いますよね。早春に咲く→まず咲く→マンサクと言われている語源からもわかるように、マンサク科であるトサミズキもまだ寒さが残る早春に葉っぱよりも先に可愛らしい黄色の花をまず咲かせてくれます!
淡い黄色の小花が7~10個ほど連なり、枝からぶら下がって咲く姿はどこかユニークにも感じられます。そんな花にやってくるのが、樹木の花の蜜が大好物のメジロたち!早春の公園などでトサミズキが小刻みに揺れている…!?と思ったら静かにジーっと観察してみましょう。黄色の花の群れの中に花の蜜を楽しむメジロが潜んでいるはずです。
花が終わるとやっと新葉が開き始めます!1度折りたたんでから広げたようなシワが特徴的な葉っぱがハナミズキに似ているとも言われていますが、トサミズキの葉の方が随分コンパクトです。明るい緑色で、丸いフォルムがポップな印象。濃い色の壁面を背景にトサミズキを植えると葉色が美しく映えますよ。さらに気温が下がると紅葉も楽しむことができます。オレンジ色に変色する様は秋のお庭を彩ってくれます。
トサミズキは高知県の一部でしか自生していないにも関わらず、今では全国の家庭や公園で見ることができます。それってとても育てやすく順応性も高いって事なんですよね。ですので、お庭の日当たりの良い場所はもちろんのこと半日陰のような場所でもしっかりと育ってくれますよ。ただし、日当たりの良い場所の方がトサミズキの特徴であるきれいで可愛らしい花や美しい紅葉がより楽しめます。お庭やエクステリアに取り入れる際には、植え付け場所をよく検討してみてくださいね。
【③ トサミズキに種類はあるの?ヒュウガミズキとは違う?】

こんなに素敵な「トサミズキ」、ほかに種類があるのでしょうか?
トサミズキと同じマンサク科トサミズキ属には7種類あり、その内日本に自生するのはトサミズキ・ヒュウガミズキ・コウヤミズキ・キリシマミズキの4種類だそう。この4種類の中でも特にトサミズキと似ているのが「ヒュウガミズキ」。落葉低木で同じようなレモンイエローの花を咲かせます。
ヒュウガミズキは別名イヨミズキとも呼ばれるのですが、日向(宮崎県)や伊予(愛媛県)とは関係ないそうで、分布しているのは石川県から兵庫県の日本海側。トサミズキとヒュウガミズキの違う点は、花や葉、樹高などすべての点でヒュウガミズキの方が小ぶりだということ。でも、それだと隣同士に並んでいない限り見分けがつきませんよね!?そんな時は花と花の中の雄しべに注目してみてください。
第②章でも紹介したように、トサミズキの花は7~10個ほどの花が集合して咲いていますが、ヒュウガミズキは3個ほど。集合している花数がぜんぜん違うんです。また、釣り鐘状の花を下から覗き込んでみてください。雄しべが赤色ならトサミズキで黄色ならヒュウガミズキです。これならなんとか見分けがつきそうですよね!
また、トサミズキには「トサミズキ・ゴールデンスプリング」という品種があるのはご存じでしょうか?トサミズキの黄金葉の品種なんです!早春の花後に芽吹く黄金色の葉っぱはとっても美しくて、カラーリーフプランツとして存在感たっぷりです。1本あるだけで周囲をパッと明るくしてしまうくらいの葉色!お庭のここぞという場所に植えてみたいですよね!
【④ トサミズキの育て方】
【④-1 植え付け・植え替え】
日当たりの方が花付も良くてきれいに紅葉しますので、できるだけ日なたに植えるようにしましょう。ただし強い西日は避けるようにしてください。極端な乾燥は嫌いますので、保湿力のある土壌に植え付けるようにしましょう。地植えのトサミズキは植え替えの必要はありませんが、鉢植えの場合は1~2年に1回、3月頃に植え替えるようにしましょう。
【④-2 水やり】
植えて2、3年もすればしっかり根付きますので、自然に降る雨だけで十分に成長します。しかし水切れには注意が必要ですので、雨が降らず乾燥が続く場合には十分な水やりを行うようにしましょう。
【④-3 剪定】
株立ちの野趣あふれる雰囲気が特徴の樹木ですので、若木の間はほとんど剪定する必要はありません。剪定を行う場合は、花後の5月~6月に行うのがベスト。トサミズキの花芽は前の年の夏から秋に伸びた枝に付きますので、遅い時期に剪定してしまうと花が咲かない原因となってしまいますよ。剪定は不要な枝や枯れ枝を根元からカットでOKです。
剪定後の夏に枝が伸びすぎてしまった場合は、落葉中の11月~2月頃に軽く樹形を整えるようにしましょう。その場合も枝の途中で切らずに、枝分かれしている部分の付け根でカットします。とはいえ、あまり木が若いうちにたくさん剪定してしまうと、樹勢が弱まり枯れてしまう原因となりますので気を付けてくださいね。
【④-4 肥料】
花が咲き終わった5月頃にお礼肥として、少量の油かすや緩効性肥料を与えるようにしましょう。
【④-5 病気・害虫】
特に目立つ病害虫はありませんが、枝が混みすぎるとうどんこ病を発生することがあります。葉の表側に白く粉を吹いたようにかびが生えますので、見つけ次第葉を摘み取るか殺菌剤の散布などで対処するようにしましょう。うどんこ病の予防のためには、枝が混みすぎないように剪定し風通しと日当たりを確保するようにしてくださいね。
【④-6 夏越し・冬越し】
夏越し、冬越しの準備は特に必要ありません。
【⑤ まとめ】

いかがでしたでしょうか。
エクステリアやお庭に植える植物を決める時に、花が咲くか咲かないか、常緑か落葉か、紅葉するかなどの見た目の特徴や雰囲気で選ぶことが多いですよね。でも今回の「トサミズキ」のように自分たちの住んでいる地域(今回は四国地方)に自生していて名称に由来のある植物を選んでみるというのも、植物選定のひとつの方法かもしれません。地域に自生しているということは生育環境にも合っているということですし、何と言っても愛着がわきますよね!
みなさんもお住いの地域に自生する植物の種類があるかどうかを調べて、お庭や外構に取り入れてみてくださいね。
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【 Profile 】
アルテデザインガーデン株式会社
代表 栗林 宏行
ガーデン・エクステリアの設計施工の専門店【アルテデザインガーデン】代表。
これまで5000件以上の案件の設計を手掛けてきた経験から、トレンドに流されない本質を極めたデザインを提案するためADG Arte Design Gardenを設立 。香川県高松市を拠点に、大阪・兵庫・京都・徳島など他府県の物件も多数手掛た実績を持つ。一般住宅の外構・庭デザインを中心に商業施設ガーデンスペース・公園・街並み計画などデザイン性の高い物件を得意とする。